【報知提供】得意ではない1枠をあえて選択して逃げる(中村雅人)

川口

まさに、知将。
そう、うなるしかない絶妙なる戦略を駆使して、中村雅人が激戦をすり抜けた。
一度は上がった雨がレース直前に再び落ちてきた準決勝戦12Rを快勝した。
「今の状態では晴れじゃあ勝ち目はないなあと思ったので、山の高いタイヤを装着しました。
本当に雨が降ってきましたねえ!もう、天気様々ですよねえ~」
ドンピシャに奇策がはまり、中村は静かにほほ笑んだ。
「でも、エンジンはどうなんだろうねえ。悪くはないんです。でも、圭一郎みたいに35とか36を切るような領域にはない。
乗りやすさはあるし、足周りも問題ない。最近の状態を考えれば、この結果は十分過ぎるんですけれどねえ。
今年は決勝には乗れても、そこまでで、優勝戦は大敗してしまうことが本当に多いんです。
突き抜け切れないんですよ。とりあえず、リングをまた換えます。リング交換の1走目は結構いい感じになるので、そこは横着しないで取りかかろうかな、と」
悪くはない愛車を中村は「ずっと、中の上ぐらい」とジャッジした。
そして、枠番抽選だった。
一番権利を得た中村は誰よりも先に白い勝負服を手にした。
「自分が1枠を選ぶのは本当に珍しいですよ。だって、苦手ですからね(笑い)。
これまで1枠から切れた印象がないし、苦手な枠なんです」
それでも、あえて最インに飛び込んだ理由を確認してみた。
「追っていける状態なら、違うところを選びましたが、今は逃げ展開が自分には合っているのかも。
だから、勝つために選びました。苦手なことから逃げない。自分自身の挑戦ですね。
たまには1枠を選んで、ここで頑張ってみたい。そんな気持ちなんです」
堅実で慎重な男が、今回は置きにいかない。
決して得意としない1枠にすがったのは、それだけ勝利する確率も高まるからに他ならない。
準決勝戦は天候をずばり読み切って、結果をたぐり寄せた知将がV戦では今度は枠の選択に知恵を絞り、注いだ。
頭脳派の戦略は、再び吉と出るか。
楽しみでならない。

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