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全日本選抜展望

 大相撲に「三年先の稽古」という言葉がある。目先の勝負にこだわらず先を見据えて稽古をしろ、という意である。青山周平が三年先の稽古をしたかどうかは知らないがデビュー以来、4年と5ヶ月、実に11度目の優出でSG初戴冠は昨年大晦日の第30回スーパースター王座だった。

 返す刃で新年の走り初めの飯塚・開設59周年、影を踏ませぬ快勝でGⅠ・7Vを遂げた。デビュー4年半でSG1V、GⅠ7Vはただ事ではない。当の本人がGシリーズ連覇の調子の良さに小首をかしげたが、ポンと殻を破った怪物が、躍動の2016年としそうな気配を漂わせる。今年を占う絶好の試金石が1月17日の船橋・優勝戦。ランク2位の中村雅人や5位の永井大介を内に置き、同6位の青山が堂々の8号車。ここで青山がV獲りとなれば、勝負付けがはっきりしてしまう。だが、そうはならなかった。このメンバーでは伏兵と言える新井恵匠が好タイムでV。準優勝は鈴木圭一郎。意地を見せた永井③、中村雅④、青山は6着に沈んだ。オートファンには逆にうれしい結果とも言える。今年、青山を中心にV争いがつづくSGやGⅠ戦線は、いやが上でも緊張感が増しそうな雰囲気だ。

 今年初のSG・第29回全日選オートレースは2月10日から14日まで飯塚オートレース場で行われる。さい先良く1月飯塚開設記念を獲った青山が中心軸にいる。不調だった弾丸Sが戻り、後半のタレも改善。なによりSG初戴冠の自信が大きい。対するのは地元エース浦田信輔。開設記念決勝はS遅れが響いて4着止り。態勢不利を挽回しようにも前半もまれてタイヤを使ったのが敗因だった。地元意識は山より高いエース浦田には、開設記念流失は逆バネとなる。闘魂をさらに高めて地元でタイトル死守を誓う。

 地元陣で爆発力を秘めるのが荒尾聡。暮れの山陽GⅠSP王優勝戦、新走路とは言え、3・331の超抜タイムで駆け抜けた。2着だったランク1位の金子大輔が参りました!とシャッポを脱いだほどだ。その後、 SS戦、飯塚開設記念と一進一退ではあるが、戦力が整ったときの荒尾の爆発力は超弩級だ。2度目のSG制覇へ照準を合わせる。飯塚勢のほかでは安定そのものの篠原睦、豪腕・田中茂、ここ一番に強い久門徹らが地元タイトル戦に目の色を変えている。

 また、青山をはじめ、船橋軍団には今回SGは特別の思い入れがある。なぜなら、数々の歴史を刻んできたオート発祥の地であり、黄金軍団・船橋の金看板を背負う最後のSGになるからだ。3月一杯で船橋オートレース場が廃止。4月、中村雅、永井大、池田政らが川口へ、青山周らは伊勢崎、鈴木圭らが浜松へ移籍となる。そういう意味でも青山周、中村雅、鈴木圭、池田政ら船橋所属の看板を背負って走る最後のSG、船橋所属選手に注目が集まる。

 2015年は歴史的には中村雅人の年だった。なにせ記録にも記憶にも残る激走がつづいたからだ。一に15連勝、二に年間最多84勝の歴史的な記録を立て続けに樹立した。SG・Vには縁がなかったが、昨年のSGすべてに優出する安定感は随一だ。その記録達成が評価されて2015年の最優秀選手賞に輝いた。飯塚のGⅠでは昨年ダイヤモンドレースを雨走路で制し、相性も悪くない。まず、今大会もベスト8入りは濃厚。

 鈴木圭も浜松移籍の前に大仕事の期待がかかる。21歳とは思えない沈着な整備、レース。もうすでに大物感たっぷり。昨年はグランプリと選手権でSGベスト8を経験。ここは一段階段を駆け上がる用意はある。

 さあ、ランク1位、そして前回覇者・金子大輔の登場だ。昨年は地元浜松でSG、GⅠを制した。2度目があってこそ、と自らに言い聞かせてきたものを2つともかなえたのが昨年だった。それは2度目のSG制覇であり、2度目のSランク1位の座。名実ともにオート界の盟主の座は近い。それには、目の上にいる先輩、そして追ってくる若手を力でねじ伏せる以外にない。2度目にこだわるなら、連覇という2度目はこれ以上ない力の証明ではないか。とてつもなく巧い金子の勇姿に胸躍る。

 こちらもさすが。ちかごろ世間を騒がせたキムタクならぬ、キムタケ(木村武之)だ。SS戦もきっちり優出。先の飯塚開設記念もSで後手を踏みながらしっかり準V。「枠が遠かった。もう少しいいSなら…」と意味深な言葉を残した。抜群のバランス感あふれるフォームは若手のあこがれ。最近、機力的に平凡な状態がつづくが、上積み図れればこれだけ怖い存在もない。 浜松勢では佐藤貴也も見逃せない1人。昨年もSS戦トライアルをきっちりクリアから5着。ここ一番のS力がケタ違いのタカヤも優出圏内だ。

 山陽勢では昨年のグランプリ、12年ぶりにSG・Vの浜野淳の一発が魅力。SS戦は機力ダウンで見せ場はなかったが、なにかやってくれる期待感は、オート界でも屈指。そして、同じ系列に藤岡一樹がいる。SS戦では「見せ場作ります」を有言実行。ミクロのSで場内を沸かせた。今年の飯塚開設記念でも優出しており、楽しみ。岩崎亮一も昨年、SSトライアルに出場して地力アップを印象付けた。年末から機力不振に悩んでいるが侮れない1人ではある。

 伊勢崎では高橋貢、早川清太郎らが主力。とくに高橋のここ一番の底力が侮れない。昨年のSGはグランプリ、選手権で優出。SS戦はもう一歩で優出はならなかったが随所に力は見せた。そして、特筆されるべきは先の船橋さざんか杯決勝での激走。最終3コーナーで飛び込んでのV獲りには場内の声援が最高潮に達した。王者の輝き再び。今大会ベスト8目指して力量を見せる。

 川口勢では森且行の好調さが目立つ。とくに、このところの飯塚での好走は目を見張るものがある。1月開設記念でも優出しており、飯塚参戦は気分の悪かろうはずがない。乗り換えた「ムラサメ」も高回転。ファンから公募して決まった車名どおり、ツボにはまれば抜群の切れ味を見せる。

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