第30期選手候補生訓練たより

〜エンジン始動〜

 競走車はエンジンに火が入らなければ動きません。スターターなどは付いていないので、自らの動きを利して始動させるのです。
 エンジンを始動させる方法は、先ず、クラッチレバーを強く握りニュートラル状態にし、競走車を自らの力で前へ押しだし進ませます。サドルに体重を載せ後輪の大歯車からチェーンを伝いミッションが動き出すようにし。この時、クラッチレバーの握りをゆるめエンジン内のクランクシャフトにへとミッションからの動力を伝えます。そうするとエンジンに吸入・圧縮・爆発・排気の行程が起こりだし、アクセルグリップを少しだけ開けキャブレターから混合気が送り込まれエンジンが始動し始めるのです。
 選手候補生に訪れる最初の難関であるこの訓練、エンジンを掛けることができなければ何も始まらないこの世界。
 エンジンにはそんなに簡単には火が入らず、始動したと思ったとたんエンストするの繰り返し。教官の怒号が響くなか、握るクラッチレバーはどんどん硬くなるいっぽうで、足取りもおぼつかなくなり、競走車を真っ直ぐ押すことも出来なくなってしまいます。とうとう愛車が転倒してしまうことも。作業着姿でさえ汗だくで悪戦苦闘となるのに、この後は、防具一式を纏っての訓練が待ち受けている。
 掛からないエンジン、奪われる体力。我慢の限界を超えなおも我慢に我慢を重ねてこの試練を乗り切るのです。

エンジン始動
エンジン始動
エンジン始動