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オートレース|リターンズ!Vol.01 97年6月発行

  SPEED STAR リターンズ!Vol.01 97年6月発行
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黒潮列伝01

相手が"参った“というような、豪快なレースをしたい。

ライバルは自分自身。勝ち負けにこだわらず、自分の走りを目指す。

 同期といえば、22期は逸材が多い。伊勢崎の高橋貢と並んで、同じ川口で影山のライバルと目される広木幸生も現在売り出し中だ。

 「今は、誰もライバルとして考えていないですね。
最近は自分がライバルじゃないかと思うようになりました。だって1レースを8人で走るから、ただ勝ち負けだけで言えば、他の7人がライバルということになるんですが、それってレースごとに日替わりで変わってゆくものじゃないですか。変わらないモノってなんだろう、ライバルってなんだろう、って考えたときに、もしかしたらそれは、自分自身じゃないかなって最近考えるようになったんですよね。そんな風に考えるようになってから、あまり勝ち負けにこだわらなくなってきました。勝ち負けに執着していると、自分が求めているものに目をやれないし、逆に自分の求めてるモノに目をやってれば、勝っても負けても関係ないでしょ。負けて腐る必要も、勝ってウカれる心配もない。だから、自分の求めてるものだけを目指そう。色んな事を含めて、今自分自身がライバルだと思うわけなんです」

 発走を目前にした午後4時ごろ。第11レースの締め切り直前になってレース場の中央に設けられた噴水池の水面に波紋が目立ちはじめた。怪しげだった薄曇りの空から、とうとう雨粒が降り始めたのだ。どよめきが場内に広がり、あわてて券売所に走る人々。すでに車券を買ってしまった者の溜息や舌打ち、そして天候と気象庁への悪態が観客席を覆う。
 やがてオッズを伝えるモニターの数字が急に勢いよく動きはじめ、最初低かった影山のオッズがじりじりと上がりだす。多くのファンは彼が雨に勝てないと読んだようだ。

 「車券ですか?そりゃ売れないより、売れた方がいいですけどね。ただ、自分の場合、今までほとんどお客さんを裏切り続けてきたんで(笑)、人気はわかりませんが、買ってくれるというのは、イヤじゃないですよね、やっぱり。かといって別に気にしてもいませんよ、そんなには。本当はあまり見ないようにしてるんです、電光掲示板を。余計なことを考えちゃうから。最近は、スタートの時、無駄な力が抜けてきましてね。え?ひと皮ムケたっていうの?こういうの。もっとムケなきゃ。でも、タマネギみたいに全部ムケても結局何もなかったりしてハハハ(笑)。泣けちゃいますねタマネギだけに(笑)」

 やがて、場内にファンファーレが鳴り響き、レーサーたちがピットからコースに出てくる。このレースで、影山は1枠。唯一40mのハンデを背負っての出走である。川口オート名物「アストロヒジョン」の画面で、彼の純白の勝負服が鮮やかに映える。スタートの合図を待って、レース場全休が一瞬水を打ったように静まり返った。

 「デビュー戦は雨でした。ズボズボ抜かされていって悔しい思いしましたよ。2日目は晴れて頭獲れたんですけど、その時の3・4コーナーは今でもよく覚えています。ギラギラ照りの暑い日だったですね」

デビュー当時からかむしゃらが持ち味。
突っ込みへの恐怖心はない。

 影山の師匠、釜本憲司(11期〉デビュー当時の彼についてこう語る。「最初の頃はもう、がむしゃらに乗ってたからね、大変だったですよ。突っ込んできちゃ、ひと悶着起こしたり、とかね。落ち着きがないとかね。大変だったですね」

 なるほど、影山の走りはアグレッシブだ。他の選手なら思わず尻込みするようなインのわずかな隙間にも果敢に切り込んでゆく。事実、この前日14日の準決のレースでも、走法注意の処分を受けている。彼は言い切った。

 「怖くないですよ、自分が行くときは。他人のレースを見てると、『あっ、怖え~』なんて思うけど、自分の時は別に恐怖心はないですね」

こんな影山の走りをある開催スタッフはこう評価する。

「影山選手は若手の22期の中では有望株じゃないですか。突っ込んで行くんでファンにも人気がありますね。サバキもいいし、何より思い切りがいい、躊躇しません。ここを突っ込めばといっときに、引いちゃう選手がほとんどだけど、影山は思い切りよくエイと、突っ込んで行きますから。外回り、いわゆるマクリもできるんでいいんじゃないですか。SGでも勝てる素質を備えてると思いますよ」

さらに、釜本は影山のフォームのよさにも注目している。

「入門当時から、影山はフォーム的にはいいもの持ってましたよ。乗車フォームってそれぞれ顔つきが違うのといっしょでレーサーによっていろいるクセがあるもんなんですが、影山の場合は基本フォームというのに、ほとんど近い乗り方してました。本人も島田選手みたいな乗り方をしたいって言ってましたから。それでハンドルとか腰廻りとかは、みんな島田選手と同じようにセッティングして走ってるんです。ええ、いいフォームしていますよ」

島田信廣は影山の目標だという。

「島田(船橋11期)さんは自分の目標なんです。
たとえばひとレース終えて帰ってきたときに、島田さんならどういつふうに走ったかなと反省してイメージを思い浮かべて、ああ、あそこがいけなかったかなとか、もうちょっとああすればよかったなとか、考えます。島田選手の
凄さは、前でも、後ろでもさばいていけるとこ。臨機応変に、正攻法でも奇手も打てる、そういう走法ですね。整備もすごいですね。遠征でいっしょになった時に見てもらったりするんですけど、ほんのちょっとしたトコがわかっちゃうんですよね。凄みみたいなものも感じますねぇ。ああなりてぇなぁって思いますもん」

相手に参ったと言わせるレースが理想。が、今の自分の実力は自覚している。

では、具体的に影山伸の目指す走りは、どういつものなのか。

「自分が目指す走りは、ひと口にいえば、豪快なレース。相手にもう参ったといわせるようなレースがしてみたいです。たとえば、自分が外から行くとして相手が抵抗できないマクリ。インに入る時には、相手が邪魔しようがない入り方って言うんですか。『ああ、もう抑えられないよ』って言わせるような、そんな豪快な、抜くとき相手が参っちゃったという走りですね。そう、それが島田さんの走りなんです」

さて、レースの方は、雨走路に抜群の強さを誇る影山の師匠釜本憲司が、20mのハンデにも恵まれて3周目で頭を獲り、追い上げる吉田幸司をかわして優勝をさらった。ハンデ40mの影山は追い上げて3着。節匠は自分が抑えた弟子をこう評した。

「課題は、山ほどありますよ。雨に弱いだけじゃなくて、まず、スタートが遅いし、整備もまだまだだし、あと、精神的なものとかね。それに、常々言ってるんです、川口だけで速くてもダメなんだって。川口だけで満足しないで、島田や片平を破るような選手にならきゃって。どまで行けるかは本人次第でしょうけど」

次の目標は、SGでの1勝。10年目までに全国区へ。

もっとも現在の実力と将来の目標についてには、釜本に指摘されるまでもなく影山自身自覚しているようだ。

「やっぱりSGは獲りたいですねえ。ええできれば全部獲りたいです(笑)。SGで島田さんや片平さんといっしょに走ったらきっとすごい自信になりますもんね。年内?ぞれはちょっと無理でしょ(笑)。今年で7年目ですけど、自分では10年以内にSG獲って全国区の選手になりたい、それだけの力のある選手になりたいなという気持ちはありますけど。まだ、全国区の選手にはなってないんじゃないですか」

では最後に、今回のレポートを影山の師匠、釜本憲司の言葉で締めくくろう。

「私にとって直接の弟子は影山がはじめてなんです。運もあるんでしょうけど、うまく育ってもらいたいですねぇ。持ってるものは、イイモノ持ってるんだから」

※文中敬称略
※文中のデータはすべて1997年6月現在のものです。
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